【トレセンのウマい話】少ない産駒のなかからGIホース誕生 カムニャックのオークス制覇から見える「父系をつなぐリレー」

厩スポイラー

2025-05-28 16:30

【トレセンのウマい話】少ない産駒のなかからGIホース誕生 カムニャックのオークス制覇から見える「父系をつなぐリレー」
【トレセンのウマい話】少ない産駒のなかからGIホース誕生 カムニャックのオークス制覇から見える「父系をつなぐリレー」
21頭というわずかな産駒数の中から、牝馬クラシック・オークスを制したカムニャック。その父ブラックタイドはいわずもがなディープインパクトの全兄であり、キタサンブラックの父であり、イクイノックスの父父である。産駒の多寡を超えて血が残したドラマ、日本ダービーも大種牡馬が繋ぐ父系に注目が集まる。
「21頭のうちの1頭がGI、それも牝馬クラシックを勝つなんて感動しました」

興奮気味にこうコメントするのは血統好きのスポーツ紙記者のS。何かといえば、先日のブラックタイド産駒カムニャックによるオークス制覇についてである。

カムニャックの父はブラックタイド。その父がサンデーサイレンスで母がウインドインハーヘア、つまりディープインパクトの全兄にあたる。2001年のセレクトセール当歳市場において金子真人オーナーが9700万円で落札。ちなみに同セールで金子氏は、後のキングカメハメハを7800万円で落札している。また同氏は翌年のセレクトセールで後のディープインパクトを落札しているが、その値段は7000万円であった。セリでの落札価格は開催年やセリでの相手関係もあるので単純に比較できないものの、落札金額だけでいえば、この3頭の中でブラックタイドへの評価がいちばん高かったことになる。

現役時代はスプリングSに勝利するも皐月賞16着後に屈腱炎を発症して長期休養。復帰後は勝利できず7歳夏に通算22戦3勝の成績で引退している。だがディープインパクトの全兄であったことから2009年から種牡馬入りした。種牡馬としてのブラックタイドはキングカメハメハやディープインパクトのようなコンスタントな活躍こそなかったものの、3年目産駒からGI7勝のキタサンブラックを輩出。そのキタサンブラックからはGI6勝のイクイノックスが出ており、父系をつなぐことができた種牡馬として名を残していた。

「2019年にディープインパクトとキングカメハメハが亡くなり、同期で種牡馬として活躍したハーツクライも2023年に死亡。また同期の皐月賞馬ダイワメジャーも2021年以降は種付け頭数を減らし、2023年をもって種牡馬を引退。そんななかでブラックタイドは、まだ現役種牡馬として種付けを続けている。さすがに近年は頭数を減らしているとはいえ、少ない産駒のなかからオークスを勝つ馬が出るなんて凄いですよ」

スポーツ紙記者のSは興奮しっぱなしである。

データによるとブラックタイドがカムニャックの母ダンスアミーガと種付けを行った2021年の種付け頭数は46頭。そこから22頭の産駒が誕生し、21頭が血統登録され競走馬となっている。参考までに2021年種付け22年誕生の主な種牡馬の産駒の血統登録頭数は、エピファネイア150、キングカメハメハ系のサートゥルナーリアが142、ロードカナロアは111、ディープインパクト系ではキズナが136、リアルスティールが122となっている。なおブラックタイドの仔キタサンブラック産駒の血統登録頭数は70であった。

「ダンスアミーガはオークス馬ダンスパートナーの孫で、父はサクラバクシンオー。キタサンブラックの成功を見て、種牡馬としては晩年に差し掛かっていたブラックタイドを種付けしようと考えた社台ファームさんも凄いし、誕生した数少ない産駒のうちの1頭を金子オーナーが7000万円で落札していたのもある意味ドラマです」

キングカメハメハとディープインパクト。ともに競走馬だけでなく種牡馬としても歴史を残した2頭を落札し、保有する繁殖牝馬からマカヒキとワグネリアンを輩出しダービー馬は計4頭。ほかにもクロフネ、カネヒキリ、アパパネ、ソダシなど数えきれないほどの活躍馬のオーナーとしてその名を知られる金子氏が、またしても自身の勝負服で現役生活を送り種牡馬となった馬の産駒でGIを制す。確かにドラマである。

「今の3歳世代はキタサンブラック産駒のクロワデュノールがホープフルに勝って皐月賞2着惜敗。ダイワメジャー系のアドマイヤマーズの初年度産駒にあたるエンブロイダリーが桜花賞制覇。皐月賞はキングカメハメハ系のリオンディーズの仔ミュージアムマイルが皐月賞優勝。しかもミュージアムマイルの母父はハーツクライでした。この流れで行くと、ダービーも何となく見えませんか。ハーツクライ系のスワーヴリチャード産駒のレディネスも怪しいですが、順番としてはディープインパクト系でしょ。オークスでカムニャックを買えなかった私が言うのだから、間違いありません」

と、ブラックタイド産駒カムニャックのオークス制覇を語りたいのか、馬券を外したただの愚痴なのか。それはともかく競馬界には説明不可能な流れも存在しており、ブラックタイドをキーとして、ディープインパクト系に注目してみるというのは一理ある。

今年の日本ダービーは、ディープインパクト系ではキズナ産駒から、きさらぎ賞馬サトノシャイニング、京都2歳勝ち馬のエリキング、シンザン記念1着のリラエンブレム、リアルスティール産駒では抽選対象ながらトッピボーンがエントリーしている。母父がディープインパクトのマスカレードボールというオチや、素直にブラックタイド系のキタサンブラック産駒クロワデュノールでいいような気もするものの、果たしてどうなるのか。

競馬の祭典ダービーを待ちたい。

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