【トレセンのウマい話】後続がアタマまで来れないペースを刻んだ“ユタカマジック” ゴルシ産駒GI2勝目で活気づく馬産地と未来図

厩スポイラー

2025-06-18 16:30

【トレセンのウマい話】後続がアタマまで来れないペースを刻んだ“ユタカマジック” ゴルシ産駒GI2勝目で活気づく馬産地と未来図
【トレセンのウマい話】後続がアタマまで来れないペースを刻んだ“ユタカマジック” ゴルシ産駒GI2勝目で活気づく馬産地と未来図
宝塚記念は7人気メイショウタバルが逃げ切りV。武豊騎手による“ユタカマジック”が炸裂。父ゴールドシップの評価、日高ゆかりのオーナー松本好雄氏の存在感を示した春のグランプリとなった。ユタカマジックを紐解くとやはり妙技が……。さらに今後の日高そしてゴルシの父としての評価をキャッチ。
GI馬6頭が参戦した春のグランプリ宝塚記念は、7番人気の4歳馬メイショウタバルが逃げ切って優勝。デビュー11戦目にしてGI初制覇を果たした。1番人気のベラジオオペラが3馬身差の2着で、3着には10番人気のジャスティンパレスが入り、3連単は12万馬券となっている。

そんな宝塚記念を、中堅馬主のレーシングマネージャーMは次のように振り返る。

「普通ならベラジオオペラが勝たないといけないレースだし鞍上もうまく乗ったと思う。それでも勝てなかったのは、勝ち馬に別格な乗り方をされたから。ひと言でいえば、ユタカマジックですよね。あれは宝塚記念というか、阪神芝2200mの乗り方を熟知しているからこそ可能だったわけで、もし宝塚記念を中山芝2200mでやっていたら勝てなかったでしょうね」

「それと前日までの雨が上がって、稍重馬場だったのも味方した。だってメイショウタバルって毎日杯が重で、神戸新聞杯が稍重。パンパンの良馬場だと引っ掛かり過ぎてしまうところがあるから、ちょうどよかった。それと武豊騎手と初コンビとなった前走が、国内の芝レースではなくドバイターフだったのもプラスだったと思います。もともと宝塚記念ってGI初優勝馬が誕生しやすいレースだけど、日高のゴールドシップ産駒でメイショウさん(松本好雄オーナー)の馬が勝ったのも良かった」

なるほど。では武豊騎手の何が“マジック”だったのだろうか。

「前半1000mを59秒1で入って、その後の1200mを1分12秒ちょうどで回ってきた。宝塚記念は今年から2週繰り上げとなって開催2週目の芝としては平均ペースなんだけど、稍重だと少し速いとも感じてしまう。しかも他の騎手にはメイショウタバルは引っ掛かる馬というイメージがあるので余計だよね。で、マジックはここから。大抵のレースってここでペースが緩むけど、1000mからのラップが12秒2-11秒9-11秒9-11秒8-11秒7-12秒5。こんな乗り方ができるのは、ユタカさんだけだと思う。これでは他の騎手は動けないよね。ようやくベラジオオペラが動いたけど、ベストより1ハロン長い同馬では最後突き放されるだけ。中団までの馬が脱落した3着以降は後ろの馬が突っ込んできたけど、絶対にアタマまでは来れない。脱帽です」

もっともレース分析は専門ではないレーシングマネージャーM。今回の宝塚記念では、ゴールドシップ産駒2頭目のGIウイナー誕生と松本好雄オーナーの勝利に意義があったという。

「ゴールドシップは初年度から重賞ウイナーを輩出していたけど、産駒のGI勝ちはユーバーレーベンのオークスだけ。そのユーバーレーベンも新馬戦とオークスの2勝のみだから、そこまでインパクトはなかった。でも今回メイショウタバルが宝塚記念を制したことで2頭目のGIウイナーが誕生した。勝負の世界では片目(1勝)だけでは偶然で、両目が開いて(2勝目をあげて)ようやく認められる空気があるんだけど、これでゴールドシップの種牡馬としての評価も変わってくるね。300万円でスタートして200万円まで下がった種付け料も今年は400万円にアップしていたけど、来年はさらに上がるかも」

たしかに、ゴールドシップが父としてのスタートラインに立ったという見方ができる。

「父ステイゴールド×母父メジロマックイーンの種牡馬だと実績はオルフェーヴルだけど、馬産地では安定感からかゴールドシップのほうが人気もあるからねぇ。しかも今回勝ったのがメイショウさんの馬だから、引退後はたぶん日高で種牡馬になる。そうなれば、サンデーサイレンス~ステイゴールド~ゴールドシップ~メイショウタバルと繋がることになる」

馬産地ではすでに安定感を売りに種付け頭数も多く人気を博すゴルシ。メイショウタバルへとつながる血にも期待が寄せられそうな雰囲気だ。続けてレーシングマネージャーMは、

「メイショウさん(松本好雄オーナー)は大旦那で色んな伝説があるんだけど、俺が一番好きなのはメイショウサムソンが社台スタリオンから浦河のイーストスタッドに出された最初の年の種牡馬展示会での出来事。メイショウサムソンの展示に多くの関係者が集まったことに感動してメイショウさんは来場者全員にお土産を渡すことにしたんだけど、急遽だし浦河では大した店もない。それで致し方なく浦河のコンビニから弁当を買って配ったんだ。その日は浦河中のコンビニから弁当が消えた、って馬産地では話題になったんだよ」

馬主としても偉大なオーナー、走る走らないだけでなく馬を購入するなど馬産地に長く貢献してきた松本好雄氏に信頼を置くホースマンはじめ、好感をもつ競馬ファンもレーシングマネージャーMだけでなはいなずだ。

今回のメイショウタバルの勝利はマジックであったが、日高の希望を象徴する1勝でもあった。人と人とのつながり、信頼関係を大事にするこのオーナーともなれば、この先また新たな伝説が生まれるかもしれない。

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