【トレセンのウマい話】近年ますます目立つ少頭数レース “陣営の諸事情”も絡むメカニズムと馬券力向上のポイント

厩スポイラー

2025-05-07 16:30

【トレセンのウマい話】近年ますます目立つ少頭数レース “陣営の諸事情”も絡むメカニズムと馬券力向上のポイント
【トレセンのウマい話】近年ますます目立つ少頭数レース “陣営の諸事情”も絡むメカニズムと馬券力向上のポイント
「少頭数のレースが多いな……」その裏には、陣営の思惑やJRAのレース編成事情が複雑に絡み合う“構造的理由”が――。現場スタッフや記者の声をもとに、少頭数レースに隠された競馬のリアルと馬券力を高める視点を読み解く。 「ウマ屋」たちが仕入れた、ココにしかない現場からのスポイラー=馬券直結情報をお届け。
少頭数のレースが多い――。先週の競馬を見て、そう思ったファンの方も多いのではないだろうか。平地戦で枠連が発売されない8頭立て以下だったレースは、下記の通り。

3日土曜日は、
東京6R(古馬1勝クラス・芝2000m)6頭
東京8R(古馬2勝クラス・芝2400m)7頭
京都7R(古馬1勝クラス・芝2200m)8頭
京都9R矢車賞(3歳1勝クラス・芝2200m)6頭
京都10R御池特別(古馬2勝クラス・芝1400m)8頭
の計5レース。

4日日曜日は、
京都7R(古馬1勝クラス・ダート1800m)7頭
京都8R島原特別(古馬2勝クラス・芝1800m)7頭
の計2レース。

なんと1週間で7つものレースが該当していたのだ。なぜ、このような現象が発生したのか。多くの関係者は「たまたま」「偶然」と話すのだが、栗東・調教助手Tがそのメカニズムを次のように解説してくれた。

「1週で7レースというのはたまたまでしょうが、各シーズンで少頭数のレースが発生しやすい条件というのはありますよ。というのもJRAでは法律で年間の総レース数が288日×12レースの計3456レースと決まっていて、その中で平地の新馬、未勝利が1450レースくらい、1勝クラスは930レース前後、2勝クラスはその半分ぐらいといった具合に、クラス分けのピラミッドが形成されています。レース総数が決まった中で競馬会がバランスよくレース番組を編成するのですが、どうしても在厩?頭数や厩舎の意向との間に乖離ができて少頭数のレースが発生してしまうからです。

少頭数になりやすいのは、世代限定(2歳、3歳)の1勝クラス戦。この時期の古馬1、2勝クラス戦。夏から秋へかけての2歳戦全般あたりです。世代限定の1勝クラス戦は、その条件をパスして重賞やオープンなどに格上挑戦する馬が多いからです。先週だとスイートピーSは出走13頭中12頭が1勝馬だった一方、同じ3歳牝馬限定の矢車賞は6頭立て。どちらもオークスへ向けてのステップですが、トライアルで確実に出走権が得られるほうに出たいですよね」

確かに、近い将来に向けて確実に出走権が得られるレースに集中するのは自然な流れである。

「次に、この時期の古馬1、2勝クラスは、どうしても厩舎での優先度が下がってしまいます。厩舎によって異なるかもしれませんが、この時期の厩舎の優先度は、(1)クラシックなど大レースへ向けた馬、(2)まだ勝ち上がれていない3歳未勝利馬、(3)ゲート試験やデビューへ向けて調教を積む2歳馬、の順になるからです。馬房数に限りがある中で、優先度の低い古馬条件クラスの馬は外厩へ放牧に出る割合が多くなります。

そして夏から秋へかけての2歳戦全般。6月から2歳戦がスタートするといっても、厩舎に3歳未勝利馬が残っている間は、そちらを優先しなくてはならない。そうなると2歳馬のデビューは控えめになってしまう。また秋になって3歳未勝利戦は終了しても、仕上がりの都合もあって2歳馬の入厩は一気に増えないので2歳戦の出走頭数はそこまで増えない。逆に1月、2月あたりにデビューできる態勢の馬は多いのですが、2月で新馬戦が終了するとあって新馬戦で除外馬が30頭とかになってしまう。かといって1月、2月の新馬戦のレース数を増やすと、2歳の新馬戦のレース数が減ってクラシックへ向けて勝ち上がる頭数も減ってします。結局の今のレース編成がベターなのでしょう」

なるほど。先週8頭以下となった7レースの内訳は、古馬1勝クラスが3レース、古馬2勝クラスは3レース、そして3歳1勝クラスが1レースで、Tの説明に合致する。またTによると、2、3歳のオープン特別でも野路菊SやアイビーS、若駒Sあたりは少頭数になりやすいという。ならばそういうレース狙いで出走すれば厩舎運営も楽ではないだろうか。

「確かにそうだけど、それが難しいんですよ。仮に少頭数になりやすいレース狙いで調整しようとしても、なかなかうまくいかない。と言うか、なかなかうまくいかない時期と条件だから少頭数になりやすいというか。それに5頭立ての5着で賞金をゲットできるからといっても、無理に少頭数レースを使ってそれ以降に影響が出てしまうようでは駄目ですからね」

やはり生きもの。そうスムーズに事が運ぶことはない、できるもんならやっているというところか。では、この時期に発生しやすい少頭数競馬で馬券的に注意することはあるのか? スポーツ紙記者Sに聞いてみた。

「条件クラスだと少頭数競馬は配当的に固くても、レース内容としては恵まれた結果となることが多い。なので次走以降でレース結果をそのまま成績を信用してはいけません。またレース選択が上手い厩舎だと、あと一歩足りない馬を狙って少頭数レースに使ってくるのですが、近年はそういうタイプの馬でも人気になって配当妙味が薄くなっている。最近のファンは勉強熱心ですよ(笑)」

昔と比べて現代競馬においては情報量、質が向上し、それに伴い馬券上手な競馬ファンも増加中。妙味やオッズに振り回されず、各陣営の思惑を図りながら予想をすることが馬券力につながってくるようだ。さすがに今週は少なくなりそうだが、少頭数競馬では、出走馬の厩舎のバックグラウンド、出走の意図と状態には注目して予想をしてみると、違った面白さがありそうだ。

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