【トレセンのウマい話】海外の良血繁殖牝馬が“幅を利かす”現在と、パンジャタワーの勝利から見える「変遷期の中で活躍する牝系」
厩スポイラー
2025-05-14 16:30

昨年の2歳マイル王で川田騎手が騎乗し1番人気に推されたアドマイヤズームが14着に敗れ、そのアドマイヤズームを前哨戦のニュージーランドTで破ったルメール騎乗のイミグラントソングも11着に敗れたNHKマイルC。勝ったのは松山騎手が跨った9番人気のパンジャタワーで、前走ファルコンS4着敗退からの巻き返しであった。2着に皐月賞6着から転戦の3番人気マジックサンズ、3着には桜花賞6着の12番人気チェルビアットが入り、3連単は150万馬券の波乱。 優勝したパンジャタワーはタワーオブロンドンの初年度産駒。タワーオブロンドンはGIこそ2019年のスプリンターズSでの1勝のみだが、京王杯SCとセントウルSではコースレコードを更新するなど通算重賞5勝。もっとも短距離馬というイメージが強く、産駒のパンジャタワーも1400mの京王杯2歳Sで親子制覇を果たしたものの、マイルの朝日杯FSでは12着に敗れていた。東京コースでの重賞勝ち経験がありながら、9番人気の評価だったのは、血統面も影響したのかもしれない。 「ちょっと待ってくださいよ。血統というならパンジャタワーには注意しないといけないでしょ」 こう意見するのは血統好きのスポーツ紙記者のS。その主張を聞いてみよう。 「パンジャタワーの母クラークスデールはダービー馬ロジユニヴァースの妹。近親に日英でGIを制したディアドラや4年前のNHKマイルC2着馬で安田記念やヴィクトリアマイルに勝ったソングラインがいます。3代母にあたるソニンクからソニンク系と呼ばれる母系で、今春のダービー卿CT勝ち馬トロヴァトーレもこの一族の出です。GIではこういった国内で活躍馬が多数いるファミリー出身、とくにGIに縁のある血統の底力は侮れませんよ」 なるほど。調べてみると2着のマジックサンズは姉に桜花賞2着コナコースト、2代母に阪神JF2着アンブロワーズがおり、近親にダービー馬フサイチコンコルドやアンライバルド、ヴィクトリーといったクラシック勝ち馬がいた。また3着のチェルビアットはジャパンC馬ショウナンパンドラの妹で、ステイゴールドの近親にあたる。 一方、アドマイヤズームは一族に米国のGIウイナーがいるものの、日本でのGI勝ちはアドマイヤズームの朝日杯FSが初めてであった。ちなみに天皇賞(春)で6番人気ながら2着に入ったビザンチンドリームは2代母の兄が朝日杯FSを制したフサイチリシャールで、3代母のフサイチエアデールは桜花賞、オークスなどGIで4度の2着があり、さらにクロノジェネシスとノームコアのGI馬姉妹とも同じ一族。皐月賞を勝ったミュージアムマイルは近親に昨年のオークスと秋華賞を制したチェルヴィニアやマイルCS馬シンコウラブリイなど。桜花賞馬エンブロイダリーは3代母が阪神3歳牝馬S(現・阪神JF)勝ちのビワハイジで2代母のきょうだいにGI6勝のブエナビスタと阪神JF馬ジョワドヴィーヴルがいた。 「近年はノーザンファームを中心に国内の牧場が海外の良血繁殖牝馬を積極的に導入しています。皐月賞で2着惜敗のクロワデュノールは、母のライジングクロスは英国オークスの2着馬、去年の皐月賞馬ジャスティンミラノの母マーゴットディドは英国ナンソープSの勝ち馬で兄のマーゴットディドも米国でGI勝ち、ダービー馬ダノンデサイルの母トップデサイルもBCジュヴェナイルフィリーズなど2度のGI2着。残念ながら先日の香港で亡くなったリバティアイランドも母ヤンキーローズは豪州でGIを2勝していました」 海外のエリート出身が日本でも世代トップとして幅を利かしているのは明らかである。しかし、 「全体的な繁殖牝馬のレベルが上がったことで、近親に国内GIウイナーがいる3代、4代、あるいはもっと前から続いている牝系が昔ほど目立たなくりました。でも去年ステレンボッシュ、アーバンシック、レガレイラとランズエッジ(ディープインパクトの妹)の孫がGIを勝ったように、国内で走っている牝系はやっぱ見逃したらいけませんよ」 と、スポーツ紙記者Sは鼻息を荒くした。では、今週のヴィクトリアマイルもそういった馬たちが狙いどころだろうか。 「今週のヴィクトリアマイルにはステレンボッシュがいますが、すでにGIを勝っていて人気にもなるでしょう。サフィラ、クイーンズウォークはきょうだいがGI馬ですが、牝系で日本のGIで活躍しているかと言えば、まだそうは言えません。ならマイルCSを勝ったナミュールの近親で3代母が桜花賞馬のラヴェルや、ダートですが近親にデルマソトガケやワイドファラオがいるワイドラトゥールのほうが馬券の妙としてもおもしろいでしょう」 今週は、どんな血統の馬たちが好走するのか注目したい。
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