【特選・外厩リスト】春GI前半戦で見えた“牙城を崩す” 開場5年目の大規模育成場

坂路の家主 M

2025-04-24 12:00

【特選・外厩リスト】春GI前半戦で見えた“牙城を崩す” 開場5年目の大規模育成場
【特選・外厩リスト】春GI前半戦で見えた“牙城を崩す” 開場5年目の大規模育成場
春のGI前半戦を制した5頭の優勝馬。その背後には、“ある外厩”の存在があった――。ノーザンファームの圧倒的支配に割って入る「新勢力」の動きに注目が集まる。今回の当コラムでは外厩の基礎知識として、ここまでの春のGI5戦での優勝馬とその利用外厩をまとめる。
春のGIシリーズは前半戦の5戦が終了し、1週の中休みを挟んで来週の天皇賞春から後半戦がスタートする。今回の当コラムでは外厩の基礎知識として、ここまでの春のGI5戦での優勝馬とその利用外厩をまとめてみた。

・フェブラリーS コスタノヴァ
(外厩:ノーザンファーム天栄)

・高松宮記念 サトノレーヴ
(外厩:チャンピオンヒルズ)

・大阪杯 ベラジオオペラ
(外厩:チャンピオンヒルズ)

・桜花賞 エンブロイダリー
(外厩:ノーザンファーム天栄)

・皐月賞 ミュージアムマイル
(外厩:ノーザンファームしがらき)

ここまで5頭のGI優勝馬がいるが、実はノーザンファームの東西外厩とチャンピオンヒルズの利用馬しかGIに勝利していない。もっとも社台グループの寡占、さらにいえばノーザンファームの1強と呼ばれる状態が続いている日本競馬界だけに、この結果は当然なのかもしれない。なお、大阪杯を連覇したベラジオオペラは2歳春の千葉サラブレッドセールで取引された社台ファームの生産馬であるが、オーナーと管理調教師側の意向もあり社台ファームのスタッフが常駐している3か所の外厩(山元トレーニングセンター、社台ファーム鈴鹿、グリーンウッドトレーニング)ではなく、社台ファームが関与しないチャンピオンヒルズを利用している。

それでは春のGI優勝馬が利用している3つの外厩について、その概要を簡単に説明しよう。

<ノーザンファーム天栄 福島県>
ノーザンファームの生産・育成頭数の増加に伴いそれまで利用してきた宮城県にある社台グループの山元トレーニングセンターが手狭となり、2011年より利用を開始。もともとはナリタブライアンなどを生産した早田牧場が創設した天栄ホースパークで、同牧場の破産後は同牧場と関係が深かったクラブ馬主のシルクが運営し、シルクのノーザンファームグループ傘下入りの過程で買収改名したものである。

利用開始前に発生した東日本大震災と福島第1原子力発電所の事故により山元トレーニングセンターのスタッフ退職が増え、開設当初のノーザンファーム天栄はスタッフ不足も影響して利用馬からなかなか活躍馬が出ない時期が続いた。それでも設備の改良やスタッフの増加により今ではコンスタントに活躍馬を輩出するようになっている。現在はノーザンファームの関東馬の外厩として利用されている。

<ノーザンファーム 滋賀県>
山元トレーニングセンターと滋賀県にあるグリーンウッドトレーニングに分散していたノーザンファームの関西馬用の外厩として2010年にオープン。ノーザンファームにとって初めて自前で設置した外厩であり、開設にあたりJRAの獣医職員がJRAを退職して場長に就任したことは馬産界で大きな話題となった。

山元トレーニングセンターとグリーンウッドトレーニング、そして北海道のノーザンファーム本場から選抜されたスタッフによる運営でスタートし、ノーザンファームの躍進とセットで利用馬の活躍が話題になった外厩である。なお、ノーザンファームの関西馬の外厩であるが、関東馬でも堀宜行厩舎の所属馬は天栄ではなくしがらきを外厩として利用している。

<チャンピオンヒルズ 滋賀県>
北海道の生産牧場チャンピオンズファームが設置した外厩で、淡路島にあったチャンピオンズファーム淡路のスタッフを移動させ2020年秋に開場。ウッドチップおよびフェルトダートの直線1000m坂路コースと、ダートとフェルトダートの1周1100mの周回コースを有し、馬房数も500を超える大型外厩で、オープン前後に他の外厩からスタッフの移籍が相次ぎ吉澤ステーブルWEST、グリーンウッドトレーニング、宇治田原優駿ステーブルといった関西の既存大手外厩のパワーバランスが大きく崩れたとも言われている。なお。同牧場は社台グループではない俗に言う非社台による運営だが、関西に自前の外厩設備及びスタッフを置かない社台グループの追分ファーム育成馬も半数程度利用している。

今春の外厩利用状況で、目立ったのは何といってもチャンピオンヒルズであろう。JRAでのGI勝ち馬以外にも、ドバイターフであのロマンチックウォリアーに先着優勝したソウルラッシュが利用している外厩であるからだ。また社台ファーム生産馬であるベラジオオペラ、関東馬であるサトノレーヴと、本来であればチャンピオンヒルズを利用しないであろう馬たちがGIに勝利していたことも特筆すべきことだ。

直近の平地GI勝利数で見ても、2023年はノーザンファーム17勝、社台ファーム3勝、その他4勝、2024年はノーザンファーム11勝、社台ファーム5勝、その他8勝と変化がうかがえる。

今週のフローラS出走予定馬では、チャンピオンヒルズ利用馬(今回在厩調整含む)はグローリーリンク、ホウオウタイタン、マーゴットレジーナの3頭。13/16抽選を突破し、樫の舞台へ向けて好発進となるか。

馬の質や数ではノーザンファームをはじめとする社台グループが他の追随を許さないが、その中で奮闘するチャンピオンヒルズ利用馬がGI後半戦でどの程度活躍するかも見守りたい。

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